障害者の元同級生に会いに行く魂胆は侮辱するためだ、と思った話をする。
通っていた中学に、支援学校の生徒が交流しに来たことがある。
支援学校の生徒の中にAという重い知的障害者がいた。
いじめっ子がいじめられないくらい知的年齢が低かった。
Aとは幼稚園と小学校は同じだったが、Aは中学から支援学校に通っていた。
通っていた中学にAが来たとき、同じ小学校出身の同級生は皆、Aを見に行った。
が自分は行かなかった。
なぜなら自分は冷やかしで見に行った奴らと違うからだ。
Aを見に行った連中には、
障害者はどのように育つのか、
障害者は中学生になっても障害者なのか、
という好奇心、若干の侮蔑があった。
Aの友達として、同じ小学校出身として会うのは建前。
本心は障害者と健常な自分の違いを確認し、自分は障害者ではなくて良かったと思うためだ。
自分は障害者とも友達なのだ、誰に対しても平等なのだ、と自分をよく見せるためだ。
そこまでして善人に見られたいか?
Aを知らない奴らに非情だと思われても、自分にはAと会う必要がなかった。
Aとは小学校卒業以降会っていない。
障害者は道具ではない、人間だ。
見渡す限り矛盾した世界
スモーキーブルーの爪先
外灯が引き立てた艶やかさを
殺す酔っ払いの笑い声
雨粒が躍る春の夜風に
鳥肌をたて今日もさみしく生きている
ヒヤリとした風が足首をとらえて
枝を踏む月時雨
いばらの道さえ見えぬのに
私はどこへ歩いているのだろうか
右足の親指の深爪
返信のないLINE
着衣を透き通る寒さ
休みない誰かの話し声
喉に突き刺さるタール
髪の毛が皮膚を貫通し
血が1㎜だけ出たときみたいな痛み
無風に揺れるブランコに座ったら
"お前、見えてんだろ"
青白い中年男に囁かれた今日
摂氏100℃、目玉が浮いては消える
セッターの気持ち悪さを抑える唇の鉄
森田童子が流れる真夜中に
目覚められない自分は
歌詞を無視して深い湖に沈んでいく
抗うつ薬で蓋をして
二度は浮かんでこられない
足を取られる前に自ら飛び込んだ
捨てられる藁すら掴めず
未だ地層に潜り続ける
薄いカーテン越しに水子の霊が咳払い
寝ている自分に特徴のない女が侵入してくる
Witching hour
遠くにあるサイレンの音
チカチカする青信号
花冷えに歯をガチガチ鳴らし
震えを止めようと努める筋肉
自分みたいな人間が生きていい世界じゃない